日本は中国に負けているという現実

 日本に住んでいると中国の英語の教育水準は日本より劣るとイメージしている方が多いかと思いますがそれは完全な偏見です。英語を母国語としない人を対象にしたテストである「TOEFL」の国別スコアをみると、日本は2006年以降一貫して中国に負けています。アメリカと険悪なムードになっていますが、足元ではグローバル人材の輩出を意図ししっかりと英語教育が義務化され着実に英語スキルの底上げがなされています。

出典:https://toyokeizai.net/articles/-/360148?page=2

日本でも2020年の春から小学校での英語導入が進みますが、中国では北京オリンピックの開催が決まった2001年から義務化されました。英語は単なるコミュニケーション手段ではなく、これからの国民的資質として必要。英語を学ぶことは国民に対する基本要求だ」という明確な戦略に基づいています。

当時の教育部の担当者は、導入の経緯をこう振り返っているそうです。

「当時のわれわれは、これからの社会がITの発展が地域格差をなくし、ITで世界とコミュニケーションするためには英語が不可欠だという認識でした。だから英語はこれから『国民的資質』として必要で、そのためには誰もが平等に学べるように、小学校段階から英語を学ぶべきだと判断しました」

教育現場への導入には紆余曲折があったようですが、結果が出ていることは前述のTOEFLのような定量情報からも明らかです。

日本の英語教育との違い

日本でも中学校からの英語は義務教育として取り入れられてきましたが、中国に後塵をきしているのは何故なのでしょうか。

教育アナリストの鈴木款氏の「中国人の英語習得は日本人と一体何が違うのか」の記事に興味深い内容がありましたのでご紹介します。

教育部は授業カリキュラムを、1回20分または40分と定め、低学年は20分授業を中心に、5年生以上は40分授業を週2回以上とした。そして教育目標を以下の3つに定めている。

① 英語に対する好奇心や興味を養い、積極的な学習態度を育成し、英語に自信を持たせる
② 英語のリズムやイントネーションに慣れ親しませ、自然な発音を身に付けさせる
③ 英語による日常コミュニケーション能力を養成する

ここで注目したいのは、教育部では子どもの成績を試験の点数でつけてはいけないと教育現場に徹底していることだ。成績評価の基準は、あくまで授業での興味・関心の度合いやコミュニケーション能力だと定めている。「では文法はどうやって教えるのか?」2人に聞いてみた。すると上海では「5年生から」、北京の教員は「小学校ではほとんど教えませんね」という。「なぜですか?」と聞くと、北京の教員はこう答えた。「当初は文法も試してきましたが、小学生は教えても習得できないし、英語が嫌いになります。学校ではとにかくヒアリングとスピーキングです」

https://toyokeizai.net/articles/-/363212

つまり、中国は小学生、日本は中学生という違いはあるのものの学校の授業では取り入れるものの試験の点数を付けないというところに違いがあります。あくまでも英語はコミュニケーションの手段であり、文法は後から身につければ良いという発想です。

英語の学び方で重要なこと

英語を学ぶ際に聞く、話す、読む、書くの4技能言語を満遍なく学ぶことが重要とされていますが、実はそれぞれ同じ時間を掛けて学べば良いということではありません。効率よく学ぶためには順番が重要で、①聞く、②話す、③読む、④書くが良いとされています。

この順番は実は皆さんが日本語を覚えた時と同じです。思い出してくださいというのは無理があるかもしれませんが、0〜1歳児に掛けてお母さんお父さんを中心とした周りの大人が発する日本語をたくさん聴き、徐々に自分でも真似をしながら言葉を発していいきます。当然初めのうちに発する言葉は拙いですが、たくさん発することで徐々にコミュニケーションが取れ、会話ができるレベルになります。

次に「読む」ですが、最初は文字の少ない絵本から言葉に触れていった方も多いと思います。もちろん初めは自分で読むことはできないので、大人に読んでもらいながら文字を理解し、自分が話す言葉と紐付けて徐々に読めるようになっていきます。ちょうどこの頃から50音の表を見たり数字を見たりしながら、頭の中にある音と文字のビジュアルを体系立てて理解していきます。

さらに文字が扱えるようになると最後に「書く」ですが、これは自分が表現したい言葉を、体系立てて理解した文字を駆使して音から文字に落としていくという作業になります。当然音=口語で表現できないと文字にすることは難しいので「書く」というステップが最後にきます。

最終的にその先にある文法や表現のお作法については、文字が書けるようになった後に身につけることで理解が早まりますし、より作法に則った美しい言語を操れるようになります。

このように日本人であれば当然のように身につけた日本語の学び順が、英語に限っては同じステップを踏めていないことが課題の一つであると考えています。その点で中国での事例の研究や日本で2020年から始まる英語教育制度の変更は良い流れです。まずは子ども達が英語を嫌いにならず、英語でコミュニケーションが取れる楽しさを感じてもらうことが重要です。子どもたちの吸収力は大人が想像する以上です。楽しんでもらえれば自ずと身につけますので、大人は必要以上に押し付けず、楽しんでもらうことを第一に子どもたちと接することを意識していきましょう。