英会話教師4000人が職を失う可能性

2020年9月8日現在、米中間でTikTokを巡り国家間の揉め事が続いています。事の発端は、2020年8月6日にアメリカのトランプ大統領が安全保障上の脅威だとして、動画投稿アプリTikTok(ティックトック)を運営する「北京字節跳動科技(ByteDance、バイトダンス)」との取引を45日後から禁止するとの大統領令に署名したことです。併せて、中国の会員制SNS「微信(WeChat、ウィチャット)」を運営する中国のIT大手、騰訊(テンセント)との取引も禁止するとしました。

さらに、TikTokを巡っては、トランプ氏がバイトダンスに対し、アメリカにおける事業をアメリカ側に売却しなければ、9月15日に利用を禁止する発表しました。アメリカ国内のアクティブユーザは約5,000万人とされており、ユーザ側は大混乱ですが、買収側としてもマイクロソフトやオラクルがの名が挙がっており大事になっています。

これらが記事のタイトルと無関係と思われる方がいらっしゃるかもしれませんが、実は密接な関係性があるのです。9月6日に以下の記事がアップされていました。

米国のオンライン英会話教師4000人がトランプ政権のTikTok戦争の被害者に―米メディア

米国の中国語ニュースサイト、多維新聞の5日付報道によると、米ナショナル・パブリック・ラジオ(NPR)のニュースサイトは3日、「中国の子どもたちにオンラインで英会話を教える米国人教師が、トランプのTikTok(ティックトック)戦争に巻き込まれている」と報じている。

記事によると、中国企業の字節跳動(バイトダンス)が開発したオンライン英会話レッスンサービス「GOGOKID」の約4000人の米国人教師が、「実際の危険」にさらされている。バイトダンスは世界的に人気を博している短編動画投稿アプリ「TikTok」の提供者だ。

トランプ大統領は8月6日、米国の司法管轄下にある個人や企業がバイトダンスおよび関連企業と取引するのを禁じる大統領令に署名した。大統領令は45日後の9月20日に発効する。違反すれば30万ドル(約3187万円)の罰金が発生し、刑事責任を問われる可能性もある。

https://this.kiji.is/675326927833810017?c=426126268348957793

以前の記事でも取り上げたように、中国はオンライン英会話を中心にEdTech(エドテック)を活用した教育が盛んに行われています。

参考:中国EdTech(エドテック)急成長の背景

中国のオンライン英会話事情

改めて中国のオンライン英会話事情についてご紹介したいと思います。中国は有力ベンチャーが多く存在し、ユニコーン企業と言われる大型ベンチャーも多いですが、EdTech、特にオンライン学習サービスだけでも複数のユニコーン企業が存在します。

市場規模も急拡大しており、その規模は約5兆円で世界最大です。日本のコンビニの市場規模が5.4兆円と言われていますので、その巨大さがわかると思います。さらに成長速度も凄まじく、年に約20%のスピードで市場が成長しています。

特に英語スキルについては、中国の経済発展をベースにアメリカなどの英語圏に留学し帰国後に成功している人材への憧れや、一人っ子政策による教育予算の増加等の要因により多くのお金が動いている市場です。

英語は北米の先生

前述のバイトダンス社が運営する「GOGOKID」同様、多くのオンライン英会話の講師はアメリカ人です。生徒が支払うレッスン料が高い分、先生の給料も副業ではなくメインの仕事として生活が成り立つレベルを稼ぐことができるそうです。(詳細は後述します)

また、中国国内に英語を教えることができる先生が少ないという事情もあります。国土の広さによる物理的な距離や、経済成長のスタートが遅かったことから高度な教育を受けた人材が少ないことが理由です。

そこでインターネットの力を借り、アメリカやカナダなど英語を母国語とする国とリアルタイムで繋ぐことで地域格差を解消するという取り組みが行われました。

ビデオチャットだけではない

オンライン英会話と聞くとスカイプでビデオチャットを繋いで会話することをイメージされると思いますが、中国のオンライン英会話の技術は高度に進化しています。

顔とテキストを写してリアルタイムに会話するだけではなく、カメラで撮る生徒の表情をAIが読み、集中力や満足度を数値にします。先生がはその情報を元に授業のやり方を変えることができるだけではなく、先生と生徒の相性を定量化した上でペアリングするということも行われています。

日本より高いレッスン料金

日本のオンライン英会話はあえて安く設定されています。理由は、駅前を中心にリアルな英会話教室が数多あるため差別化です。フィリピンを中心とした人件費が安い国の方を講師としてアサインし、低価格でマンツーマンのレッスンを提供することで優位性を見出す戦略です。

一方で中国は、日本のようにリアルな英会話教室が少ないという事情もありますが、国民性もあり「北米のネイティブに習わせたい」というニーズが非常に強くあります。さらに子ども一人に掛けることができる教育費も潤沢にありますので、品質が高ければ高いレッスン料を払うという親も大勢います。

これらの背景もあり、日本のオンライン英会話の相場が月5,000〜8,000円ぐらいに対し、中国は2〜5万円程度と高くなっています。高いレッスン料を支払ってもらえればその分講師の人件費に回すことができるので、物価の高い北米在住のネイティブスピーカーを講師にしても成り立つのです。

まとめ

以上のように、中国のオンライン英会話をはじめとしたEdTechは日本より格段に進んでいます。日本もコロナをきっかけにオンライン学習の注目度が上がってきていますので今後の発展に期待です。

余談:中国で英語から始まり様々なサービスを手掛けている「好未来」の特徴について詳細に記載されているこちらの記事もご参照ください。

中国塾最大手、好未来の全貌を解説ー好未来の3つの強みとは?