インドで急成長している映像型授業のEdTech企業「Byju’s」(バイジュース)をご紹介します。2020年には評価額108億ドル(約1兆1400億円)を超えたユニコーン企業で、3Dアニメーション合成など最新技術を多く取り入れているのが特徴です。
目次
オンライン動画教育「Byju’s」(バイジュース)の特徴
企業概要
Byju’sは2008年に現CEOのByju Raveendran(バイジュー・レヴィーンドラン)によってインドで創業されています。字面を見てお気づきになった方もいらっしゃると思いますが、社名は創業CEOの名前に由来しています。元々は大学入試や公務員試験対策の”オフラインの予備校”としてスタートし、2015年に学習用のアプリのリリースとともに中高生向けサービスを拡張しました。
さらに2017年には対象年齢を下年齢に拡張し子供向けのサービスをリリース、2020年には企業評価額108億ドル(約1兆1400億円)と急成長をしている企業です。
なお、世界中の多くのユニコーン企業は赤字が多いですが、Byju’sは2019年後半に黒字を達成したことも発表しています。
参考:Indian education startup Byju’s turns profitable

授業の特徴
Byju’sは録画形式の映像授業を提供していますが、大きな特徴は単に先生が話している映像を観るだけでなく、3Dアニメーションを合成している点です。これにより閲覧する子どもたちは画面に集中しながらもビジュアルがあることによってより楽しく授業を受けつつも理解が進むという仕組みてです。
こちらの動画をご覧いただくのが一番イメージがつきやすいと思います。
また、セクションごとにオンライン上でテストを受けることもできます。ただ受講して結果を知るだけでなく、さらにその結果を元に個々人に最適化されたフィードバックやアドバイスを受けることもできます。
以下、詳細を見ていきたいと思います。
Byju’s Classes「Personalised online tutoring program」
パーソナライズド オンライン家庭教師ということで、一人一人に最適化されたプログラムを受けることができます。
インドのトップ先生による双方向授業
平日週末を問わず優秀な先生から授業を受けることができ、疑問点や考え方をすぐに解決することができます。また、苦手な点も分析して示してくれ、フォローが行われます。毎月のテストもあり進捗や改善点を評価してくれます。
専門メンター制度
専任のメンターが絶えず生徒をサポートしてくれます。生徒の成績結果の分析を元に月次の面談で学習相談ができたり以降のカリキュラムについて方向性を確認することができます。
革新的なByju’sアプリ
24時間365日高品質な映像授業を確認することができ、さらにそれらの映像学習のプログラムは、生徒個人の特性に合ったもので構成されます。また、映像学習は無制限に受講することができますし、受講状況についてもグラフを使って客観的に確認することが可能です。
いつでもどこでも学習が可能なパーソナライズドアプリ
5万本以上の動画、テスト、クイズ、ゲームなど多彩なコンテンツが用意されたアプリです(登録無料)
映像やコンテンツを利用するだけでなく、個々人に最適化された学習ガイドが表示され、受講するコンテンツや苦手な分野を元に今後の方向性を示してくれます。

急成長の背景
アプリをリリースした2015年をきっかけに急成長しており、初年度で500万ダウンロード、アクティブ会員20万人も達成しました。2020年の初めには登録生徒数(≒アプリダウンロード数)は4,000万人を突破し、コロナウィルスのパンデミックをきっかけに6,500万人まで急増しました。
Byju’sはコロナによるロックダウン期間中はすべてのサービスを無料提供、終了後の現在の有料会員数は400万人を超える規模に成長しています。
売上高も大きく成長しており、2020年の予測ではインドのみで売上10億ドル(約1055億円)以上、純利益は1億5000万〜1億8000万ドル(約158億〜190億円)とされています。
今後の展開
2020年の9月には5億ドル(約530億円)を資金調達しており、さらなるビジネス規模の発展とIPOが期待されますが、今後少なくとも2年間の上場を考えていないそうです。黒字化を達成しているので当然かもしれませんが、今後は海外展開や事業の多角化を計画しているようです。
例として、現在もDisneyと提携したサービスを提供していますが、2020年8月にはコーディング技術を教えるスタートアップWhiteHat Jr.も買収して、提供コンテンツを増やす算段のようです。
余談ですが、買収したWhiteHat Jr.は創業18ヶ月にも関わらず3億ドル(約316億円)でインドのEdTech(エドテック)」企業の注目の高さが伺えます。
M&Aに関しても「この部門の長期的なポテンシャルはかつてなく高まっている。当社は既存のユーザーベースあるいは新しいマーケットで獲得し得る新規の顧客に強固なプロダクトの構成要素を加えることができる企業を探している。または、新たなマーケット、特に英語が使用されているマーケットにおいてすぐさま事業を展開できるようディストリビューションで貢献してくれる企業が欲しい」とコメントしているようですので、今後も大型M&Aが動きそうです。
また、海外展開についても英語圏マーケットの子どもを対象にデジタル学習アプリを立ち上げる計画もあるようです。
日本は、中国、インド、アメリカと人口規模が違うという事情はありつつも、世界のEdTech企業との差が開く一方です。コロナをきっかけにオンライン学習の注目度は一気に高まっていますので、日本にも世界と渡り合える企業が生まれることを期待します。
追記
2021年6月13日付の記事で「Byju’sがインドで最高評価額のスタートアップ」になったとされています。
オンライン学習大手Byju’sがインドで最高評価額のスタートアップに、UBSなどから資金調達
記事によると、UBS Group、Zoom創業者のEric Yuan(エリック・ユアン)氏、Blackstoneなどから新たに約383億円を資金調達し、評価額約1兆8094億円とこれまで最も評価額が高かったPaytmを抜きインドで最も価値の大きなスタートアップになったそうです。
調達した資金は今後継続してスタートアップの買収に活かされるようです。2021年にもすでにインドのコーチング機関Aakashを1,096億で買収しています。