コロナ渦におけるオンライン教育の期待

各種メディアで報道されているように、コロナ渦におけるオンライン教育への期待と重要性はとても大きくなりました。EdTech業界に携わっている身からすると時代が一気に5〜10年進んだような感覚です。

beforeコロナにおいてオンライン英会話を含むビデオ通話を使った遠隔などのEdTechを活用した新しい教育スタイルを説いても、理解はいただけるものの「実用性や実際の導入は未来の話ですとね」という反応がここ3年ぐらい続いている状況でした。一部例外的に大人向けのオンライン英会話(レアジョブやDMM英会話等)は、ビジネスマンを中心とする英語スキルの強化が必須の層に受け入れられていましたが、子ども向けに関しては相当なハードルがありました。

コンテンツがない、子どもにデバイスを用意できない、セキュリティが心配等、実際は解決できる方法があるのものの知識がないから検討できないことが背景に「できない理由」探しが行われることが多かったです。

それらがコロナを境に一変し、特に政府の緊急事態宣言による外出自粛下では、EdTechを活用したオンライン教育が一気に注目を浴び、逆に導入していない学校や塾がネガティブな印象を与える程になっています。

緊急事態宣言解除後の動き

これらの動きは緊急事態宣言解除後に下火になったのかというとそうでもありません。参考にGoogleトレンドで「オンライン英会話」の検索推移を見てみると、コロナの危険性が叫ばれるようにになった3月中旬を境に一気に検索が伸びているのが分かります。

その後緊急事態宣言が解除されピーク時より下がったものの、ベースが一段上がっているのが見て取れます。コロナが完全に落ち着いていないという理由もありますが、例年この時期は検索数が落ちる時期なのでそれを加味するとトレンドが変わったと言えます。

Google Trends 「オンライン英会話」

※子ども向け教育は、新年度に合わせて2月後半〜4月中旬まで一気に検索活動が活発になり、GWを明けると落ち着くのが例年の動きです。夏休み前は定常的な習い事や学習ではなくサマースクールや夏期講習関連のトラフィックは増えますが、2020年はそれらの動きも変則的になっています。

継続率の重要性

3、4月にオンライン教育を開始した子どもたちはそろそろ3ヶ月を迎えます。これまで導入部分に注目が集まってきましたが、ここからは有用性が重視されてきます。

「有用性」と言っても教育分野における証明は非常に難しいです。端的に分かるのがテストの点数ですが、問題設計や難易度によっても異なりますし、英語などの語学分野では3ヶ月で定量的な結果が出すことは難しいです。

とは言え、指標なしでは導入した施策の良し悪しを判断することは難しいです。そこで「継続率」を中間指標とすることを推奨します。継続率の定義は、ある期間に開始した生徒が一定期間後に残っている割合ですが、子ども向けの教育では、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月、18ヶ月、24ヶ月の5つの期間を指標に置くのが良いです。

それぞれの期間での意味は以下のようなイメージです。
3ヶ月:導入前とのギャップはないか
6ヶ月:定着しているか
12ヶ月:マンネリしていないか、習慣化できているか
18ヶ月:年度を跨げているか、生活環境が変化しても定着しているか
24ヶ月:結果が現れているか

教育サービスですので、当然求められるのがスキルが身についたか、成績が上がったかですが、結果が出るまでに時間が掛かりますので、継続率を有用性の中間として測っていくことが重要です。

リアルとオンラインの継続率の差

継続率が◯%だったら良いのかは、教科や提供形態、ビジネスモデルによって異なりますので、各事業者で基準値を設定する必要があります。参考として英会話の場合、リアル教室の通塾型が12ヶ月後で70%、オンライン形式だと半年後に30%残るのが一般的と言われています。他の教科でも概ね参考値としてはこの程度かと思います。

この参考値に驚かれる方もいると思いますが、リアルとオンラインの継続率の差はここまではっきり出てしまうのが現実です。これはリアルの方が優れているからという理由では決してないです。

オンラインの継続率が低い要素として考えられのるは、
・オンライン向けのコンテンツではない(リアル型教材をそのまま利用している)
・強制力が働かない
が挙げられます。

教科や提供方法によっても要素は異なりますが、概ね共通する事項も多いので、オンライン英会話をイメージしながら考察します。

オンライン向けのコンテンツではない

リアル型の教室の教材(紙の教材、ノート、筆記用具)は、何十年、それこそ印刷技術が発明されて以降何百年も続く中で改善、最適化された実績のある学習法です。先人たちが課題を見つけ改善してきたリアル教室に適した手法であることは間違いありません。

一方でオンラインに必ずしも適しているとは限りません。画面を通しての会話を手元に用意した紙のテキストを見ながら行うのでは、対面に劣るのは間違いありません。会話以外の自習(予習・復習)もそのまま流用し自宅で行うのでは、分からない箇所をすぐに質問できない等のデメリットがあります。

コロナ以降突貫でオンライン化したところは例外なくこの状態だと思います。そして今後同じ課題を抱えることになると予想されます。

強制力が働かない

リアルの通塾型の大きい特徴として予め曜日(日付)と時間が決まっていることがあります。これは先生や生徒のスケジュールの都合というのもありますが、一方で「その時間に必ず行かなければならない」という強制力が働きます。

また、塾に行ってしまえば周りの生徒も勉強に取り組んでいるので自分もやらないといけない環境に身を置くことになるので自習に自然に取り組むことができます。

一方でオンラインの場合、民間の学習サービスに限ってですが、一般的に予約は自分で取る場合がほとんどです。自身のスケジュールを確認し、都合が良い時に空いている先生を選んで予約をするのですが、空き枠が無かったり希望の先生が空いていなかったりすると、予約までの期間が空いてしまったり、予約自体を後回しにしてしまうケースもあります。

自習の場合も、人間の意思は弱いですので他のことに気を取られなかなか集中することができないことが多々あります。子どもであればなおさらです。

継続率を上げる打ち手

オンライン教育の継続率がリアル教室に劣る理由は上記以外にもありますが、まずはこの2つを解消することから始めるべきです。コロナをきっかけにオンライン化を進めた学校や塾も多いですが、特に塾においてはそろそろ継続率の壁にぶつかるところも出てきているはずです。

オンライン向けのコンテンツ

意識すべきは「子供が興味を持ってくれるか」「自分自身で取り組めるのか」の2点ですが、テクノロジーの強みを活かすことで解決が可能です。

画面を通しての会話においては、教科書のページ全てを見せるのではなく一つ一つの問題に区切りメリハリを持たせることが重要です。余計なものを表示しないことで集中力が高まりますし、画面が切り替わることで気分もリフレッシュします。単語であればフラッシュカードをデータ化し先生の手元で操作しながら進めるのも良いです。

さらに、先生が出したクイズに対して正解の場合は「ピンポン」と言った音を出すと子どもたちは喜びますし、オンラインホワイトボードの機能を使い絵を書いたり、用意したテキストに文字を書き込むこともお勧めです。

手元のテキストを見るのではなく、画面を一緒に見ることを意識したコンテンツ作りが重要です。

自習については、「ゲーミフィケーション」の考え方を取り入れることも一つの手です。例えば、解いた問題の数や学習の進捗をグラフや数字などビジュアルを多用し可視化することで達成感が得られます。データが残りますので、過去に遡り確認することもできるので、振り返りやもっと頑張ろうとやる気を持つきっかけにもなります。

問題が正しく解けた結果に対してのインセンティブも設計の一つですが、継続や頑張ったことなどのプロセスが可視化されることも大切です。

また、これらのデータを元にした結果を保護者も見れるようにし、がんばったことを褒めてもらったり、会話のきっかけにすべきです。間違えてはいけないのはこれは「監視」ではなく、あくまでも目的は子ども達を褒めたり、話題のきっかけにすることであり学習時間の少なさや正答率が悪いことを指摘することではありません。

強制力を持たせる

予約の仕組みに課題があると前述しましたが、これは「あらかじめ予定をブロックする」ということで解決ができます。月や半年など一定の期間単位であらかじめ曜日と時間を決め毎週その時間に必ず授業を受けると決めてしまいます。文字で表現すると厳しく感じますが、実際の塾や学校も同じことですし、1週間の生活サイクルに組み込むことで習慣できるため長く続けることにつながります。

さらに、期間中予定がつかなくなることがありますが、その場合は「お休み」するのではなくその場で「振替の日時を確定させる」のもコツです。あとから決めます、その分自習しますは信用できませんし、休むことは生徒も先生も息抜きができ短期的には楽ですが、結果に結びつかず続かない理由の一つになりかねないため避けるべきです。

前項で記載したゲーミフィケーションも有効です。継続インセンティブを設計し、授業の分だけスタンプを押したり、回数を重ねることで何かしらのアイテムがもらえるような仕組みも子どもたちは喜びます。

少し話は逸れますが、子どもたち(中学生〜大学生)には大人たちが理解できない「バーチャルでも常に繋がっていたい」感覚があります。どうゆうことかというと、勉強でも会話はなくてもオンラインで繋げていたい、それぞれ別のことをしていて会話はないけど繋がっている状態に身をおきたいという欲求です。

四六時中ずっとビデオチャットが繋がっている状態は賛否が出てきそうですが、学習専用のSNSのようなもので、一緒に勉強することで励まし合うような方向性に誘導できるとより一層勉強に力が入るかもしれません。

運用しながらの改善が必須

今後継続率が重要になり(重要視すべき)、継続率を上げるための打ち手の例をご紹介しましたが、提供する教育サービスや対象となる教科、子どもたちの年齢や特性、保護者の意向等の変数によって最適な対策は異なってきます。

導入後、サービス設計時や開始当初のと変わってくることも多いですし、コロナの影響など外的要因も大きいため初期段階で100%の完成度を実現することは困難です。

重要な考え方は、オンライン教育はWebサービスの一種であり、サービスを運用しながら改善していくことが当たり前であり、変化させることを厭わないことです。教育サービスである以上、信頼性や実績が問われることは当然ですが、社会自体の変化自体や変化のスピードが上がってきていますので、教育サービスといえど市場のニーズに合わせた早い改善が求められています。誰も予想することができなかったコロナの影響下では、誰も100点の正解を持っていません。いち早く導入し、一番に改善していくことを意識していきましょう。

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