EdTechサービスの課題

EdTech(エドテック)の導入が叫ばれて久しいですが、なかなか導入が進まない現状があった中、コロナの影響で一気に注目度が上がり実用性が評価されています。肌感では5〜10年の市場の伸びが一気に短縮された印象です。

コロナを機にサービスも増えており、Zoomやスカイプを使ったリアルタイムのティーチングから、録画された教材を生徒の都合が良いタイミングで繰り返し学習できるもの、さらにはタブレットやスマートフォンのアプリを使い、AIと組み合わせたものまで出てきています。選択肢が増えることは生徒にとっても適したサービスに出会える可能性も高まるだけでなく、提供側も競争相手がいることで品質が磨かれていくメリットもあります。

一方で運営サイドのビジネス視点に立った時の課題も見えてきました。大きくは2つあると考えていて、一つ目は「利用開始後の継続率が上がらない」こと、もう一つは「新規会員獲得の難しさ」です。一つ目の継続率にいては別途記事をアップしましたが、リアルな教育サービスと比較してオンライン教育は、対面でない分継続しにくい状況が起こりやすいです。

よろしければこちらをご参照ください。
Afterコロナにおけるオンライン教育で重要なこと

本記事では2つ目の「新規会員獲得の難しさ」について考察したいと思います。

オンラインマーケティングの必要性

まず大前提として、EdTechでありオンラインで行うサービスである以上、集客はオンラインが主体となります。もちろんリアルな場合で集客をし、サービスをデジタル上で提供する考え方もありますが、アプローチできる人数が限定されてしまう他、競合他社がオンラインで想定顧客に対して宣伝することが大いに考えられます。むしろオンラインで提供できる強みをポジティブに考え、こちらから従来顧客になり得なかった層に対してアピールしていくことが重要です。

また、生徒(保護者)視点に立って考えた場合も、リアルな教育サービスの場合、自宅や学校からの近さや最寄駅にあるか等が重要な選定基準でしたが、オンラインになると場所の制約がなくなりますので、ネットを使い広く情報収集をし、適したサービスを選択するという行動が起こります。つまり、これまでは良い立地に教室が存在すること自体が宣伝であり、プラスアルファとして地域の見込み顧客層に対してのみ宣伝をすれば良かったのに対し、これからはオンライン上での他社との競争に勝つことが必然となります。

求められるオンラインマーケティングとは

一口に「オンラインマーケティング」と言っても広義であり、戦略や手法は多岐に渡ります。代表的なものですと、GoogleやYahoo!の検索ワードに連動して上部に広告が表示される「リスティング広告」やFacebookやInstagramのタイムライン上に表示される「SNS広告」などがあり、中堅以上の教育サービス企業も広告出稿を行なっています。

その他多くの手法が存在しますが、常に新しい手法も発明されていますし、それとともに効果のあった手法の効果が落ちていくこともよく起こります。オンラインマーケティングは、常にそれらの情報を仕入れるとともに、自社サービスで試してみてPDCAを回すことが不可欠です。

なお、近年オンライン上の広告を出稿すること自体は非常に簡単になってきており、個人でも手軽に扱うことができます。出稿のためのシステムも非常に良くできており初めての方でもガイドに沿って設定するだけで操作することができます。一昔前は配信ロジックと呼ばれる、配信先や見せ方の戦法に重要なノウハウがあったのですが、直近はそれすらアルゴリズムが開発され自動化されていますので、非常にシンプルになっています。

自社や自身で運用ができなくても、「インターネット広告代理店」と呼ばれる自社の目的に沿って出稿業務を代行してくれる企業も存在しますので頼ることもできます(費用の相場は手数料として出稿予算総額の20%です)

マーケティング戦略の課題

前述の通り、手法や実務については「やろうと思えばなんとかなる」時代なので難しく考えすぎる必要はありません。本記事の本題である「EdTechマーケティングの難しさ」は別のところにあります。

マーケティング戦略を考える際は以下のポイントを考慮して進めることが大切です。

直接子どもにリーチする手段が限られている

子ども向けのサービスだから直接子どもに届けたい、知ってもらいたいと思いがちですが、そもそもどうやって?という課題があります。前述の通り、EdTechにはオンラインマーケティングの相性が良いですが、子どもたちがオンラインに接する機会は大人に比べて限定的です。

例えばスマホの普及率で言うと2020年1月17日~22日の東京都「家庭における青少年の携帯電話・スマートフォン等の利用等に関する調査」によると以下の結果が出ています。

子どもの年代別にスマートフォンの所有率をみると、小学校低学年19.0%、小学校高学年34.6%、中学生75.4%、高校生92.4%。小学生の所有率は前年より減少しているが、中学生と高校生はほとんど変わらない結果となっている。

https://resemom.jp/article/2020/04/07/55691.html

さらに、子どもが使う端末は、使用可能時間やフィルタリング、ペアレンタルコントロール等の使用制限が掛けられていることがほとんどです。つまり、大人向けと同じ様にオンラインマーケティングを考えていると配信ボリュームが出ないと言う事態に陥ります。

プロダクトを選定、決済するのは子どもではない

子どもに知ってもらい興味を持ってもらったとしても、最終的に決定するのは子どもではなく保護者というのがほとんどです。当然お金の出し元も保護者になりますので、有用性や費用対効果については厳しく検証されます。

一言に費用対効果といっても教育サービスに対する判断軸は難しいです。分かりやすいところで言うと学校の成績が指標の一つではありますが、必ずしも成績が伸びる訳ではないですし(成績保証と謳っているサービスも存在はしますが)、成長を実感できるまでには一定の時間が必要です。

また、自社サービスを使っていただけたとしても、その後には学校の成績や学年、学期の変更時に定期的な習い事の見直しが入るという特徴もあります。学期末に継続率が下がる要因の一つで、定性的な観点が取り入れられにくいため、効果が測れないと見切りをつけられてしまうことがあります。

課題への対策

上記2点の課題を提示しましたが、私が考える対策についてご紹介します(詳しくは別記事でご紹介予定です)

リーチする手段

直接子どもに対してリーチする手段が限られますので、保護者向けにリーチします。これまでのテレビCMやチラシと同じではないかと思われる方もいるかもしれませんが、SNS広告等は年齢や子どもの有無の推測を指定して配信することができます。自社サービスのターゲットになる年齢の子どもを持つ保護者に絞って配信していくというのがセオリーになります。

また、リスティング広告(検索連動型広告)でも、「子ども」「小学生」といったワードをプラスの条件に加えることで絞り込みができます。例えば、小学生向けの英会話サービスの場合、「英会話 教室」のワードを入札すると当然大人でビジネス向け英会話を探している方にも表示されます。そこで「英会話 教室 小学生」と入れることで、小学生限定で絞り込むことができます。

一方でワードを多用しすぎると設定したワードで検索する人が極端に少なくなり、表示回数が減り広告の意味をなさなくなることが発生しますので注意が必要です。

保護者に選んでもらう

成績が上がることが一番ではありますが、子どものやる気や他の習い事や学校での授業の取り組み内容によってなど変数が多すぎるため現実的なアピール手段としては難しいです。

よく合格者の話を紹介しているサービスがありますが、どのサービスも似たり寄ったりで、本当に保護者が参考にしているのか疑問です。結果論で語られても自分の子どもにも当てはまるのか、その保証はあるのかがセットで語られる必要があります。

私が重要と考えるのは、学習のプロセスと進捗を可視化することです。例えば英語であれば、3ヶ月、6ヶ月、12ヶ月後の目標が設定されており、単語であれば習得した単語の数や英語で会話した時間等です。昔から目標はあるじゃないかというご指摘もありますが、EdTechを活用すると、単語であれば勉強した回数、小テストで正解/不正解だった回数、苦手な単語のピックアップができますし、会話の時間も開始と終了の時間をアプリなどに記録することで累計の時間を後から振り返ることもできます。

これらを子どもが自分だけで確認するのではなく、保護者がみれるような機能を用意するのが良いです。学習した日やその週のまとめを保護者宛にメールで送るといった手段も有効で、検討段階では安心材料になりますし、利用開始後も子どもの頑張りが見えると継続して応援したいという気持ちになります。

保護者の決裁については定性的なところも多いので自社のサービスに合わせて運用しながら改善していくことが求められますが、何より子どもがやりたい、続けたいということが一番の大切なポイントです。


EdTech(エドテック)は、オンライン上でのマーケティングが重要になってきます。従来のリアルなサービス提供の場合、顧客の居住エリアに制限を受けましたが、オンラインの世界では世界中の人にアプローチすることができます。反面、これまでとは違った宣伝が求められまるので専門の知識を身につけることが必要です。よろしければこちらの記事も参考にしてみてください。

EdTech(エドテック)マーケティングのススメ

参考:オンラインマーケティングの基本 by Google