コロナウィルスによる緊急事態宣言と外出自粛の影響で、これまでの学習スタイルが大きく変わりました。子供たちは大変不便な思いをしたと思いますが、未来を考える良い機会とポジティブに捉え、EdTech(エドテック)を活用した未来の教育・学習スタイルについて考察してみます。

コロナの影響で変わったこと

外出自粛制限の初期にオンライン学習に切り替えて出た意見の中には、「全てをオンラインで代替しよう」「慣れればなとかできる」「対面で会う必要はない」がありました。

大人もオフィスへの出社禁止に伴いリモートワークになり、当初想定していた以上に自宅環境、オンライン環境で仕事が成立するということを体感した方が多いと思います(子供が家にいることで仕事に集中できないといった別の課題もありますが)

実際5月24日付の産経新聞にはこのような記事が出ていました。

『新型コロナウイルスに伴う緊急事態宣言が25日に全面解除される方向の中、感染防止のため在宅勤務などテレワークで働いた人の6割超が、収束後もテレワークを続けたいと考えていることが、日本生産性本部の調査で分かった。在宅勤務に満足しているという回答も6割弱を占めた。新型コロナ感染拡大をきっかけに、「平日は毎日出勤」を基本としていた日本の働き方が大きく変わる可能性が出てきた。』

オフィスに出社しなくても可能な仕事は想定以上に多く、これまで「やらなかっただけ」感もあり、実際働いてみると、移動時間がなくなったり事前に準備をすることで無駄な議論が無くなったりとパフォーマンスが上がったり効率的なところもあります。

一方で外出自粛の期間が2ヶ月近くになると、全てをオンライン学習に切り替える課題も見えてきました。特に子供は体を動かしたり、友達と遊んだりする時間が極端に減ってしまうだけでなく、学校という場で重要なコミュニケーションスキルや社会性を身に付けるという機会を失っています。

また、教材に関しても短期的にはリアルなものを置き換えることで対応できますが、期間がなくなると専用の教材も必要になってきます。授業で必要な教材を事前に印刷する、手書きで書いたものをスキャンして送るなど、授業のスタイルによっては継続していくハードルがとても高いです。

未来の理想的な学習形態とは

結論から申し上げると「リアルとデジタルテクノロジー(EdTech)のハイブリッド」が理想であり、目指すべき姿だと考えています。以下にその学習方法のイメージを記載します。

まず、インプットは自宅、学校、出先、祖父母宅、学童などの生徒がいる環境、どこでも可能です。スマートフォンやタブレットのアプリやウェブを使い、動画、静止画、音声などそれぞれのジャンルや教科に適したコンテンツを利用します。

単に一方的に受動的に学習するのではなく、EdTechの強みを活かすことで、一人一人が自分のペースで進めることができるようになります。例えば、間違えたところは自動的にシステムが記憶し、繰り返し出題する、逆にできるところは飛ばしてどんどん進むことができます。

学校でインプットを行う場合も、先生1人対生徒30人で黒板を使い一斉に同じことを学ぶのではなく、全員がタブレットを用いて各々進めていくというスタイルです。極端ですが、個人でのインプットは学校にいく必要がないとも言えます。

つまり、インプットは場所や時間の制約を解放し、さらに習熟度を周りの生徒に合わせるという制約までも取り払います。

他方、インプットの効率化により余剰が生まれた時間は、プロジェクト型学習やチームで行う学習に割くべきです。これはリアルの強みを活かすところで、チームを組んでのディスカッションやフィールドワーク、プレゼンンテーションなど個人では伸ばすことが難しいスキルやコミュニケーション能力や多様性を学ぶ機会を生むことを目的とします。

「リアルとデジタルテクノロジー(EdTech)のハイブリッド」は、仕組みだけでなく、個人でのインプット学習とチームでのアウトプット学習のハイブリッドという意味にもなります。

コンテンツの工夫

前述のインプットに置いて生じる課題、疑念も当然あり、例えば、「子供が飽きないか」「自分自身で取り組めるのか」といった事が挙げられます。この点についてもテクノロジーの強みを活かすことで解決が可能です。

例えば、ゲーミフィケーションの考え方です。学習の進捗はグラフや数字、アイテムなどビジュアル的に楽しく可視化することで、達成感が得られます。過去に遡り確認することもできるので、振り返りやもっと頑張ろうとやる気を持つきっかけにもなります。

問題が正しく解けた結果に対してのインセンティブも設計の一つですが、継続と頑張ったことなどのプロセスが可視化されることが重要です。

また、上記の進捗は保護者や学校の先生が見れるようにし、がんばったことを褒めたり、会話のきっかけにすべきです。絶対に間違えてはいけないのはこれは「監視」ではなく、目的は子供達を褒めたり、話題のきっかけにし子供に主体性を持たせることで、学習時間の多少や正答率が悪いを指摘することではありません。

また、コンテンツから派生して仕様設計の話になりますが、子供たちには大人たちが理解できない「バーチャルでも常に繋がっていたい」感覚があります。例えば、勉強している間、会話はなくてもオンラインで繋がっていたい欲求があります。四六時中ずっとビデオチャットが繋がっている状態は賛否がありますが、学習専用のSNSのようなもので、一緒に勉強することで励まし合うような方向性に誘導することができるとモチベーションも上がります。雑談にならない配慮が必要ですが、ちょっと質問したり、自分が頑張ったことをアピールしたり(人によリマすが)、それを見た人が自分もがんばろうと思ったり、使い方の工夫次第で子供達の学習の援護射撃もできます。

マルチデバイス

政府のGIGAスクール構想により生徒に一人一台の端末を提供するという流れがありますが、ハードありきの議論はリスクがあります。重要なのはコンテンツでありハードは手段の一つでしかないということを念頭に置いて考えていくべきです。

マルチデバイスの活用例は、家では画面お大きいタブレットやパソコンが適しています。特にインプット学習では広い画面を活かし、動画の閲覧や図表を表示したり書いたりがやりやすい、かつ効率も良いです。

一方で移動時間中(そこまで常に勉強する必要があるのか議論は置いておいて)も学習の振り返りや気になったところが調べられるようにスマートフォンと連動すると便利です。疑問に思ったことはすぐ調べるという習慣付けにもなります。

注意が必要なのは、スマホは一つのコンテンツが短い時間で完結するようなコンテンツ設計が必要です。一つのパート長いと飽きますし、そもそも着手すること自体が辛くなるので、後々起動すらしなくなることもあり得ます。

一つのコンテンツを小分けにし、例えば小テストが受けれるようになど、デバイスに応じて目的を切り分けることが重要です。

大人の役割の変更

最後に、EdTechを活用した未来の学習スタイルでは大人の役割も変わる必要があります。これまでの学習は、学校や塾の先生の主な役割は子供たちにいかに分かりやすく、興味を持ってもらえるように教えること=ティーチングでした。これは遠い昔から紙とペン、黒板を用いた学習方法には適しており悪い訳では全くありませんが、学習するスタイルが変化するのに合わせ教え方が変わっていくのは自然なことです。

これからはどう役割を変えるべきか。それはティーティングからコーチングに移行するべきと考えます。学び方や学ぶ内容がこれまでより多様・多岐に渡るため、画一的なティーティングは子供たち個々の学習進捗の差や能力差を埋めるには適さない場面も多々あります。

もちろん子供から質問や相談があったら真摯に答えることは重要であり、コーティングスキルが求められるからといって、ティーチングが疎かになってはいけません。また、学校や塾の先生だけがこの役割を担うだけでなく、保護者もまたコーチングの役割を担うべきです。

まとめ

EdTechの積極活用による学習スタイルの変化は、必ず起こりますし、コロナウィルスの影響でその未来が5〜10年早まりました。現時点で唯一の正解はありませんが、積極的に活用し課題を見つけいち早く改善していくことが教育全体の質を向上させる最短の方法だと思います。失敗を恐れず何事も積極的に取り組んでいきましょう。