苦戦する学習塾業界

2020年8月12日付の日本経済新聞に「4~6月期学習塾大手、7社全社の最終損益悪化」という記事が出ていました。

学習塾業界が新型コロナウイルスの打撃を受けている。大手7社の2020年4~6月期(一部3~5月期含む)決算が11日出そろい、全社の最終損益が悪化した。授業を休講したことや、対面での入会相談ができなかったことが響いた。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62521650R10C20A8DTC000/

一方、いち早くオンライン授業を導入した早稲田アカデミーなどは他社と比べて影響が軽微だった。早稲田アカデミーの6月末の生徒数は前年比5%減の3万6千人と、4~6月期の売上高も5%減にとどまった。教室のコロナ対策を徹底するリソー教育では、他塾からの転入が増えているという。ウィズコロナに迅速に移行できるかどうかが今後の収益の明暗をわけそうだ。

https://www.nikkei.com/article/DGXMZO62521650R10C20A8DTC000/
日本経済新聞2020/8/11 大手学習塾売上比較

コロナによる外出自粛要請が出ていた4〜5月の影響をダイレクトに受ける期の決算ではありますが、各社とも赤字が拡大するという結果になりました。

次の7〜9月期は多少の回復は見込めると思いますが、学習塾業界の特性として4月の新学期シーズンに新しい生徒を獲得しないとその後1年間の売上が立ちにくい点があります。夏期講習も生徒の獲得時期ではありますが、今年は小中学校の夏休みが短くなったため、例年同様の新規生徒募集を目的とした夏期講習が実施しにくい状況でもあるので、V字回復を期待するのは厳しいと思われます。

今後の見通し

7〜9月期でのV字回復は難しそうですが、来年に向けてはさらに厳しくなるとことが予想されます。

理由の一つ目はコロナが完全には収束しないことが挙げられます。今年の春頃よりはコロナウィルスの影響範囲や対策が見えてきていますが、ワクチンが全国民に行き渡るまでは相当な時間が掛かります。それまでは外出自粛までとはいなかくても、ソーシャルディスタンスやマスクなどの防衛策を実施することが必須になります。

予防策を取り続ける場合、塾としても定員数を制限する必要が出てくるため計画していた生徒数=売上を確保できなくなりますし、何より生徒側が密集状態になる塾の教室を避ける行動を取ることが予想されます。

二つ目は代替手段の多様化です。コロナショックの影響でオンラインでの教育スタイルが進化してきたことで必ずしも対面の塾に通う必要がなくなった点です。前述の日経新聞の記事の早稲田アカデミーのようにオンライン化を進める塾もありますが、学習塾業界はどちらかというとITに対しては苦手意識を持たれる方が多い組織ですので、オンラインサービスを得意とする企業と競合する場合に厳しい戦いになります。

当然可能なところからオンライン化は進めてますが、子どもの総数が減っている環境ですので、基本は防衛戦になり、いかに生徒数を維持するかがいっぱいいっぱいで売上を伸ばすところまでは厳しいと思われます。

Afterコロナに向けて

このまま対策を取らないorオンラインサービスを主戦場として戦うだけでは、学習塾業界全体として減衰待ちの状態からは変わりません。教室というリアルな場を強みとした新しいビジネスモデルを構築していくことが求められます。

以前別の記事にも記載しましたが、リアルな教室が差別化する要素として「コーチング」がやりやすい点です。オンラインでの授業を受けたり仕事をしたりする経験がある方はわかると思いますが、決まったことを効率よく処理していく点においてはオンラインは非常に強いです。

一方で新しいアイディアを考えたり、モチベーションの維持や上昇のきっかけにする点はオンラインは苦手で、リアルに軍配が上がります。

これは子どもたちの学習においても同様で、インプットは各自都合の良い場所や時間で行い(塾の教室でないとやる気が起きないといった課題は、オンラインツールの設計で解決もできます)、リアルな教室の場では、わからないところの相談や進捗の相談を行えば良いのです。

また、グループディスカッションやプレゼンテーションの練習もリアルや対面ならではの強みが活かせる場所です。画面越しだと活発な意見が出てこなかったり、場の雰囲気や流れを掴む訓練が難しいです。プレゼンテーションも緊張感が違いますのでリアルな場での練習・発表は行うべきだと思います。

各種オンライン化が持て囃されていますが、しばらくすると課題も見えてきます。その結果ある程度の揺り戻しが起こりリアルに戻ってはきますが、コロナ以前の状況まで戻る可能性は限りなくゼロに近いです。その中でリアルな教室や先生がいることを強みに新しいモデルを構築することが求められていますし、学習塾業界もコロナをきっかけに新しいスタイルに進化する良いタイミングだと思います。